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「恋する女たち」氷室冴子 [書籍]




氷室冴子さまは2008年6月6日、亡くなられた。
心よりご冥福をお祈りする。


手元にある文庫は昭和62年(1987年)に発行の版で、35刷。
ちなみに初版は昭和56年(1981年)。
6年間で35回も増刷されるというのがすごい。
また、6年間もコンスタントに書店に並び続けるというのが既にして驚異である。

だいたいが昨今の書籍は下手な輸入果物より傷みの早いナマモノだ。旬を過ぎたらあっという間に店頭からなくなるので、迷ったら入手することをおススメしておく。明日にはその本はないと思え。
品切れしても、ちょっとやそっとでは重版はないと思った方がいい。
マーケティングによる流通事情優先の昨今、短期間で重版が重ねられる書籍は、返本ロスを恐れるが故の初版部数の読み違いといっても過言ではない。
そうでなくてもニッパン、トーハンは部数をセーブしたがる。売る気あるのか、てめーら。
初版部数がちょぼいので、50坪くらいの町のちーさい本屋さんまで新刊が行き渡らない。なので、客はでかい書店かネット注文に逃げてゆき、町の本屋さんは経営が苦しくなり、日本中でがんがんつぶれている。
できれば本はネット注文や新古書店でなく、町のちーさい本屋さんで買ってあげてください。

昭和の発行なんで、もちろん活字組版だ。
律儀な文字組みが いと美しい。
最近の、いかにもMacで組みました的な文末ガタガタを見慣れていると、ページの裾がぴったりまっすぐに埋まっている様が好ましい。フォントが美しい。凸版印刷の印圧も愛しい。
活版職人さんが手がけた、ちゃんとした書籍だなあ。誤植もないぞ。
最近の本ときたらまあ軟弱で、テキストデータ流し込みーの、校正もユルユルーの、誤字誤植誤変換の嵐だもんね。


それでもって、氷室冴子だ。

氷室冴子は神様だ。
主人公の吉岡多佳子は私だ。(と、思う読者は少なくなかったはずだ)
私のことをこんなにわかってくれるんだから、こりゃもう神様に違いないのだ。

いったいどうして、好きだの恋だの愛だのをぽろぽろ口に出して言ってしまえるのかわからない。
触れるだけで命取りの急所を晒して敵陣に乗り込むようなものだ。
多佳子は、そんなとんでもない急所を得てしまったことに戸惑う。

恋心などという物騒なしろものを他人に知られてなるものか。
まして惚れた男にさとられるくらいなら俗世を捨てて尼寺に隠遁してやる、いいや、息を止めて窒息死してやる。

こういうのを、「恋ひは死ぬとも」という。
恋い焦がれて死んでしまおうとも構やしない。

ストイシズムと裏腹の、ロマンチシズム極まれり。
なんという少女趣味!
嗚呼 ちきしょう!
そりゃ、当時は少女だったんだから、少女趣味の少女小説をエモエモ読んでたって恥じることはないんだけれど。
それでも! 嗚呼! ちきしょうめ!

言い訳しておきますが、少女小説ど真ん中でありながら、万葉集の歌を引用してみたり、「ハムレット」がなぞらえられたり、意外と骨太?なんすよ。
中世の騎士物語「トリスタンとイゾルデ」が、高校生の会話の中で当然のように引用される。
「彼にはちゃんと金髪のイゾルデがいる、とあたしは睨んでんの」
「じゃあんた、白い手のイゾルデってわけか」
こんな高校生いないよ。
でも、だからこそ憧れた。こんな高校生になりたいと思ったもん。
憧れて当然ですよ。

本当に、大好きだったなー。
タグ: 氷室冴子
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コメント 5

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kaz777

kaz777は10代のころ、少女ではなく少年でしたが
氷室冴子さんにはずいぶんハマったものです。

当時、少女小説と呼ばれていたジャンルの本を
買うのを気恥ずかしいと思ったものですが、それを
押しても読みたいと思える作品たちでした。

謹んでご冥福をお祈りいたします。
by kaz777 (2008-06-09 15:46) 

solaris

nice!ありがとうございます。

自分の氷室さん歴は、たぶんクララ白書からだったような・・・ずいぶん昔のことですけど。kaz777さんと同じく、コバルト文庫に手を出すのは、ちょっと恥ずかしかったですね。


by solaris (2008-06-10 19:45) 

シロタ

kaz777さん、コメントありがとうございます。

意外と男の子も読んでたんですね。
「海がきこえる」なんかは男性ファンも多いみたいですし。


solarisさん、コメントありがとうございます。

あの頃のコバルト文庫は、少女向けというよりも、児童文学に飽き足らなくなった世代に良質なジュブナイルを提供しようという意志があったのかなーなんて思います。
編集部が頑張ってたんでしょう。
by シロタ (2008-06-11 13:21) 

のほほん

こんにちは。

私も少々ではありますけど氷室冴子さんの書籍を読んでいました。

最初に買ったのは「ざ・ちぇんじ!」。
高校生の頃だったかな。



「海がきこえる」が大好きでした。
by のほほん (2008-06-11 15:52) 

シロタ

のほほんさん、コメントありがとう。

「ざ・ちぇんじ!」は、「とりかえばや物語」がベースになってるんですよね。そういう、氷室冴子さんの斬新な古典の楽しみ方のおかげで、史学科を専攻した、なんていう人も少なくないみたいです。
本当に、たくさんの人に愛されて、影響した人なんですねえ。
by シロタ (2008-06-12 18:07) 

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