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「雲雀」佐藤亜紀 [書籍]



なんと活版印刷だ! 文字の輪郭が印圧で紙に食い込んで、くっきりシャープな字面を際立たせている。端正でなめらかな書体は佐藤亜紀のハンサムな作風にぴったりだし、文字組みもいい。
いい仕事してるぜー、って嬉しくなったけど、考えてみればそんなん当たり前の仕事じゃないか、とも思う。

「天使」と舞台や登場人物を共有する短編集。続き物とか番外編とかじゃなくって、「天使」を読んでなくってもついていける、独立したお話なので長編の「天使」の前にこっちから読んでもいいかも。


「王国」
戦場の前線の様子が、淡々と乾いた描写でつづられるのがいかにも佐藤亜紀。
血のたぎる高揚もなければ、めそめそ嘆く悲劇でもなく、常温の人間たちの描写。
でもって、いわゆる超能力と言われるような能力を備えた人たちがごろごろ出てくるんだけど、その人たちがまた、特別であることの優越感とか苦悩とかからほど遠く、この上なく常温を保っている。
そういった熱に浮かされなさっていうのは、ある種の諦観に裏打ちされていて、その透徹ぶりが快い。
熱に浮かされちゃってるカルージヌィに対するジェルジュの辛辣。
「見せることができると言うなら人類とやらを僕に見せてくれませんか。 ー中略ー 鼠一匹殺す値打ちもありませんよ」
この乾いた諦め。


「花嫁」
うー。冷めて乾いてて淡々とした描写で、タフで殺伐とした人間同士なのに、こりゃとんでもねえロマンスだよ。うっとりだよ。
「あなたが好きよ、グレゴール」
「おれが出て行くから言うんだろ」
「そうだけど、でも好きよ」
ここんとこ、何度も何度も反芻しちゃった。うー。大好き。


「猟犬」
ひらたく言っちゃえば“超能力対決”(笑)な、お笑い沙汰なんだけど、伊達酔狂もここまで極めちゃうとめちゃくちゃかっこいい。男ってのは莫迦だねえ、と慨嘆しつつ、こういう莫迦なとこのない男ってつまんねえよな、と思う。


「雲雀」
これは、たぶん「天使」を読んでから読むとより楽しめるんじゃないかと。
「天使」で、なにもかも諦めきったような硬く冷たいジェルジュが、とうとうキレる。キレるんだけど、そのキレっぷりはやっぱり伊達男で、それでいて可愛げがあって(ギゼラに対する態度ったら、もう。かっわいい。笑)、ジェルジュ萌えご褒美編といってもよいかと(笑)。
ディートリヒシュタインのおちょくられ三昧な哀愁もイイ。ものすっごい阿呆扱いされちゃってるけど、ジェルジュとかスタイニッツとか他の連中がヤバ過ぎるだけなんだよね。気の毒に。




「天使」
「雲雀」を読んでから読むと、後半のエピソード、ダーフィットとその母、ライタ男爵とのやりとりが今ひとつ唐突で食い足りない感じがした。それで「花嫁」が書かれたのかなあ、なんて思う。
んー、やっぱり「雲雀」の前にこっち読んだ方がいいかな。

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