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「大奥」、追記 [書籍]

先日の「大奥」書評記事アクセスが急激に増えて、うわなんじゃーてビビってしまったのだけど、どうやらはてな界隈でブックマークやコメントをいただいていたらしい。

「大奥」よしながふみ:キワモノ偏愛記 増補版:So-net blog 「大奥」よしながふみ:キワモノ偏愛記 増補版:So-net blog

びっくりしたけど素直に嬉しいや。はてなのサービスって、おもしろいねえ。
で、ブックマークを下さった方が他にどんな記事をブックマークしたり、ご自身でどんな記事を書いたりなさってるか興味深くってあれこれ辿って、これまたおもしろかった。

んで、やっぱりわたしとしては、ジェンダーとかフェミニズムとか、男女の差異についての項目に興味深く注目がいってしまう訳なのだった。

あれこれ人さまのご意見を拝読していて、そういや、「大奥」もそうなんだけど、実をいうとわたしはよしながふみのジェンダー観というか男女観がしっくりこないとこがあるんだよなー、ていうことについて、もやっとしてたことがちょっと明らかになったように思う。

それっていうのは男女の差異をジェンダー(社会的性差)に求め過ぎじゃないかなー、ていうこと。
「生殖機能を別にすれば、男女に差はない」吉宗がよしながふみのスタンスなのだとしたら、男女の差異はほぼジェンダーとイコール、と捉えておられる訳なんだろうか、と。

そりゃまあジェンダーは影響としてデカいとは思うんだけど、その割り切り方には些かひっかかるものがあって。

対談集「あのひととここだけのおしゃべり」(太田出版)で、初潮を迎えることを非常に象徴的に描かれた表現について疑問に思ったこと、生理を淡々と受けとめ得ることなどを語っていて、うーんなんかそれってえらいこと身体性が稀薄なんじゃなかろうかのー、でもってこの人BL作家で男性同士の性愛を描いてたりするんだよなー、それって逆に業が深い気もしますなー、などと思ったことも思い出した。

身体性が稀薄、つまり自ら女性の体を持つってことに意識が稀薄なような印象。
だからこそシャープに論考に切り込んでいけるようなところがあるのかもしれないんだけど。

お話づくりとか漫画表現の技巧的な達者さについては文句なく巧くって、漫画作家としてどうこうってんじゃないけど、思想としては今ひとつ得心がいかなかったりするかな、てこと。


個人的には、男女の差異を隔てる上で身体の違い、特に男女の違いを決定づける生殖機能が女性の自意識に影響するところが大きいのじゃないかと思っていて、ここんとこずっと考え込んだりしてる訳なんだが。
つまり生殖って、異生物を体内に受容するわけで、個体の同一性を保持する免疫機能と真っ向相反する。
“自分じゃないもの”を排除する免疫機能と、受容して育てる生殖機能を併せ持つ、矛盾する身体。

よしながふみの描写にはその矛盾を含んだ身体性が乏しいように思えて。
例えば、「大奥」二巻で家光が強姦される→孕む→出産して子の誕生を喜ぶ、な描写のあっさり具合。
女性が強姦に恐怖するのは暴力ってこともそうなんだけど、“自分じゃないもの”に浸食される、自分が自分でなくなってしまうような恐怖があって、そこにはまさに矛盾する身体の葛藤があると思うんだけども、ていうか女性の体を持つわたしはそのように感じている訳なんだけど。

だから、家光の母お彩にしても家光にしても、さらには綱吉にしても、子に対する母の気持ちに矛盾がなさ過ぎるように感じる。
我が子とはいえ、強引に浸食してきた“自分じゃないもの”を、そんなにあっさり受け容れられるもんなのかなー、と。

とはいえ、よしながふみの試みに意義や説得力がないってことでもなくって、ジェンダーっていう切り口のみでもかなり切り込んでるんじゃないかと思う。
けども、んーまだまだこんなもんじゃないけどねえ、なんていうふうにも思うのだった。






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コメント 10

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islecape

はじめまして。はてな集落のほうから来ました。

よしながふみの身体性の希薄さ、というのは、ある意味それが読者の獲得になってないだろうか、というふうに考えたことがあります。それがあの人の「語り方」であって、しかもそれは成功している。であれば外野に何を言うことがあろうかという感じでしょうか。そのあたり、ちょっと思うところがあって言及させていただいてます。
by islecape (2009-10-18 18:14) 

シロタ

islecapeさん、こんにちは、はじめまして。
コメント&TBありがとうございます。

はてな界隈は、ブックマークもそうですが、ある記事に対して関連や応答する記事などがupされ、ブログ間のつながりが密なところが興味深いですね。

関連記事たてていただいて光栄です。ゆっくり拝読させていただきますね。


ところで、
>であれば外野に何を言うことがあろうか

ていうところで、“外野”というのは“男性(異性)として”、っていう意味でとらえてよろしいんでしょうか。

女性の身体性とか女性性みたいな話になると、「君子危うきに近寄らず」的に腰が引けちゃう男性の気持ちもわかんないでもないのですが、、、
ていうか、“外野”かー。



by シロタ (2009-10-19 09:37) 

islecape

再度お邪魔します。

「外野」については完全に説明不足でした。以前、『プラネテス』という宇宙漫画について、あるキャラクターの造形が薄っぺらいとか、政治の描き方が甘いというような話題がありました(はてなで)。「こんなキャラクターや物語を持ち上げる読者の底が知れる」「『政治』をサブカルの読み解きに使って優越感ゲームに興じるとは、バカめ!」といった具合に。そこにはもちろん作者の意図などが入り込む余地はなく、つまりただただ「外野」が大騒ぎをしている、という状況だったのです。

よしながさんはよしながさんの問題意識に従って物語を描いているであろうと、僕は思っています(そこには、読者層の兼ね合いや出版社の意向などが当然あるかもしれませんが)。ある読者からすれば、「踏み込みが甘い」とか「インテリ臭が気になる」など、素直に称揚できない部分があるかもしれません。しかし作品はけっきょく彼女のものであり、その評価もすべて彼女に帰すものです。僕自身『大奥』が完全無欠の素晴らしい大傑作とは思っていませんが、しかしそれは僕の個人的な感想にすぎません。僕はひとりの読者であり、偉そうに評価を下せる立場にはない――そういう意味で「外野」という言葉を使いました。

つまり、『大奥』を「今の大衆に膾炙しやすい、真実に切り込むには物足りない、浅い表現」ととらえる向きはあるかもしれないけれど、それは作者の主体的な選択の結果であり、「外野」はそうしたことで重箱の隅をつつくより、この作品が楽しめる時代であることに満足するべきではないだろうか、ことさらに作品をあげつらうことは、あるいはよしながふみの作家性に対する冒涜になるかもしれない――というような意味を込めたつもりだったのです。こうした立場性の表明ははてな文化の不文律みたいな感じなので、うっかりこちらでも筆を滑らせたという次第。

それにしても、適当なタイトルでトラックバックを送りつけたあげくこんなことを言うのは申し訳ないかぎりですが、自分の性意識や作品消費に関して、今回のエントリや頂いたコメントを契機として自分自身の至らなさに気付くところが多々ありました。どうもありがとうございます。
by islecape (2009-10-19 17:33) 

シロタ

うわー。「外野」てそういう意味ですか。うーん。うーーん。

全然まったくきっぱり考え方が違いますわー。
つまり作家と作品と読者の関係ってことですね。

そりゃまあ作家には作家の意図があるでしょうけれど、わたしは、読者が作家の意図通りに読まねばならないってことはないと思っています。
ましてや作家の意図と違う読みをすることを冒涜とは思わないですね。


今回の「大奥」評にしても、ブックマークコメントで「この漫画嫌い」とおっしゃった方がいらして、わたしの周囲にはそういう感想をもつ人が皆無だったのでびっくりしたんですが、どうして嫌いなのかをきちんと述べられていますから、そうかそういう読み方感じ方もあるか、と納得がいくものでした。「嫌い」だけなら感想ですけど、「どこがどうしてどのように嫌いか」となればそれは批評です。
さらに、そのコメントをきっかけに、わたし自身が「大奥」に感じる違和感はこういうことかなー、と掴めたようなとこもあり、鑑賞が深まったと思っていますのです。


とはいえ、こういうのは向き不向きがあって、批評的なことをパキパキ言ったり言われたりするのはケンカみたいで苦手、っていう人はいらっしゃるかと思います。
そういう方にパキパキ言え、と言うつもりはないですけどね。



ところで、
>「踏み込みが甘い」
>「インテリ臭が気になる」
>「今の大衆に膾炙しやすい、真実に切り込むには物足りない、浅い表現」

シロタはそのような意見は述べておりません。
文脈から、シロタがそのような意見を発した、みたいなふうにも読める可能性があるかと懸念するので、念のため否定しておきます。


>この作品が楽しめる時代であることに満足するべきではないだろうか

この作品が成立し得る時代であることに憤りを感じる人間も居ますのです。


by シロタ (2009-10-20 10:16) 

タニプロ

はてなユーザーなんで僕もブックマークしましたぜ!大奥のことはよく知らないけど!
by タニプロ (2009-10-21 01:50) 

シロタ

タニプロさん、こんにちは。コメント&ブクマありがとう(笑)。

ブクマって、はてなユーザーのサイトだけじゃないとこがおもしろいねえ。
最初はびっくりしました。たまに、関連エントリとか辿ってくとドハマりして気がついたら結構な時間が経っててビビったりします(笑)。


by シロタ (2009-10-21 09:43) 

エンジェル

>強引に浸食してきた“自分じゃないもの”
受け入れざるを得ない、自分ではないもの(だが、遠因的に、もしくは象徴的には自分でもあるもの)。
自分の意思とは関係なく、自分に侵入してくるもの(そしてそれを拒否できない、もしくはどこかで受容している)。
…などなど、その辺は男女関係であり、親子関係であり…総じて、ワタシとしては人間関係すべてに言えることかな?^^;

「大奥」の中での「生まれてしまえば、子は可愛い」の言葉に至るまでの葛藤は
あえて描かないでいたのか、
はたまた、そこだけは当時の女性における「母親観」「人生観」に準じたのか。
子どもの死亡率が今とは比べ物にならないくらい高かった時代と今では、まったく違うでしょうしね。
とはいえ、ワタシも家光の↑の言葉には「あぁた、そんなあっさりと(笑)」と思いましたことですよ。(笑)

by エンジェル (2009-10-24 12:40) 

シロタ

エンジェルさん、いらっさいましー。コメントありがとう。

まーその、男女の違いを突き詰めたらば、“自分じゃないもの”の受容ってとこに顕われんじゃないかとざっくり考えておりましてね。

>人間関係すべてに言えることかな?

そうそう、そうなのかなと思って。身体のはたらきが、感じ方や考え方に影響すんじゃないかしらん、ってことで。

だからたぶんねえ、男性は“自分じゃないもの”を受け容れられないんじゃないかと思うですよ。

>受け入れざるを得ない、自分ではないもの(だが、遠因的に、もしくは象徴的には自分でもあるもの)。
>自分の意思とは関係なく、自分に侵入してくるもの(そしてそれを拒否できない、もしくはどこかで受容している)。

この感覚は女性的だと思いました。
男性は、“自分のもの”にしないと受け容れられない。たぶん。



家光の出産に至る葛藤描写んとこは、確かに、省いたのかなーとも思いました。
でもこのテーマでそこ省くかーっていうのもなんかギモンだったり。

厳密に江戸時代の感覚で言ったら、恋愛観なんかも全然違いますよねえ。たぶん恋愛と婚姻がそんなに強固に結びついてないだろうし、特に世継ぎを必要とする家ではモノガミーにこだわんないだろうし。
母親観もどーなんすかねえ。産んだ母親が子を育てるとは限んなかった訳ですよね。

やっぱりちょっとここらはひっかかるんですけど、まあ些細な点ですよね。



by シロタ (2009-10-24 19:22) 

チョロ

通りすがりにすいません。
フェミの人たちは生物学的な差異に原因を求めることを殆どタブーとしている感じがします。
話が終わってしまいますものね。
だからそこで随分な隠蔽が行われている気がします。
生物学的な差異がジェンダーにどれほどどのように影響しているのか、またそれはどのように扱われるべき事なのか、思いっきり踏み込める迫力あるフェミの人出ないかなー。
by チョロ (2010-11-17 08:10) 

シロタ


わ、こんにちは。
「フェミ」て語についビビってしまいました(笑)。

なにしろ、ひとくちにフェミニズムと言っても、いろんな意味で使われてて百家争鳴状態、たまーに厄介な方が居らっしゃいますのでね。
とはいえ、フェミニズムに救われる方も少なくない(自分含め)と思うので、変な否定や誤謬に加担したくはないものです。基本的には尊重したい。


という立場で申さば、やはり政治的な問題なのかなあ、と。
生物学的な差異は、覆しようもなく決定的な差異である、として、差別とか抑圧的な言動を正当化するための根拠にされがち、っていう。

例えば上述のシロタ説、“他者の受容の可否”だって、女性は受容する能力を先天的に保持しているのだからして、男性の欲求を受け容れるべきである、なんていう理屈にもってかれちゃうと嫌ですからねー。ほんと、話が終わられては困ります。

また、生物学的な性別を扱う際、性自認が身体と異なる人の存在に対して慎重になるべきですね。


>またそれはどのように扱われるべき事なのか、

これがキモですよね。
男女の差異はともかくとして、その差異がどのように扱われるべきか。
それがきちんと語られれば、そも原因なんてどーでもいいかもしれないです(笑)。

ていうのが、今んとこの“タブー”の背景なのではないかと推察。

踏み込んだコメントありがとうございます。

by シロタ (2010-11-18 17:40) 

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