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「説教師カニバットと百人の危ない美女」笙野頼子 [書籍]

笙野頼子の著作を、もりもりざくざく読んでいる。
先般の「ドン・キホーテの「論争」」から引き続き、「だいにっほん、ろりりべしんでけ録」「徹底抗戦!文士の森」「金比羅」「萌神分魂譜」「海底八幡宮」「おはよう、水晶―おやすみ、水晶」「母の発達」「片付けない作家と西の天狗」「二百回忌」「S倉迷妄通信」「時ノアゲアシ取リ―笙野頼子窯変小説集」「一、二、三、死、今日を生きよう!成田参拝 」「てんたまおや知らズどっぺるげんげる」「硝子生命論」「幽界森娘異聞」「渋谷色浅川」「レストレス・ドリーム」て、だいたいこんな感じの順でただただ読んでおる。
ていうのは、作品単体の個々の世界から地続きで繋がって、より大きく広く深い笙野ワールドみたいなんが在って、その全体像を把握しないとよくわかんないところもあるように思えて、例えば「純文学論争」とか踏まえたほうがわかりよい、とか、とにかく笙野世界を概観すべきように思えて、がばがば読んでみてるのだった。
うん。わかったところも、わかんないところもあるけど、なんかこう、頭が耕される感じ。なんつーかな。ぼんやりとしていたことが明らかになっていくような。
世界認識が変わる。即ち、世界が変わる。ぬ。危険なことだなー。

でもって、全体像の概観把握から再び個々の作品へ戻ってみようと思う訳です。
というわけで「説教師カニバットと百人の危ない美女」。

初読で戸惑ったのは、とにかく文章が読みづらいというか、妙にぎこちない感じ。木目に逆らってカンナをかけてささくれだらけになってるような、ざらざらちくちくした触覚を思わせるような。語り下手な人の内輪ウケなつまんない話を聞いてるみたいな。読んでるとひっかかりまくってイラっと癇に障る。
ところが、その質感とか拙さ感(拙さではなく、拙さ感。わざとやってる)が妙な迫力をもって力強い運動をなしてる。訥々とした語りに引き込まれる感じというか。慣れてきてリズムを掴めるとぶっとびのドライヴ感でイマジネーション炸裂。
ともかく、むちゃくちゃなお話をぶんぶん振り回して読む側にどかんと投げつけてくるような、どえらい迫力なのです。ゴリラがうんこ投げてくるみたいな、っていったらどんな比喩だそれは(笑)。

そのお話というのが、主人公の八百木千本という作家が、巣鴨こばと会なる結婚願望炸裂しまくりの女性たちに執拗に絡まれまくるていうもの。
この巣鴨こばと会の描写がもう、物凄くて。たぶん、20代後半〜の年齢で独身の人はたいてい言われた経験があるだろうと思うけど、「結婚しないの?」ていうあの例のヤツ、ねばねばーっと迫ってくるような、しかもピュア善意っていうのが始末に悪い例のアレが横滑りして、「(いいかげんイイ歳なのだから)結婚しろ」「結婚できないなんて人格に問題がある」「結婚したがらないなんて無責任でワガママ」とか訳わかんない人格攻撃してきたり、加えて女に対しては「子ども生め」「夫と舅姑に尽くしまくれ」とか「良妻賢母っ!」「貞淑っ!」「婦徳っ!(知らんかったわそんな言葉)」とかが付け加えられて100万倍くらいに増幅され、それがゴリラのうんこ投げの如く八百木千本先生の小市民で平穏な生活にたたきつけられる訳です。

実際そういうねばねば善意に悩まされてる人には読むのがつらい描写なのかというとそうではなく、逆に粘っこい態度をかなり風刺して描かれてるので、なんて気色悪い連中だー、て笑えます。ていうか凄いよ。ホラーだよ。

でもって、八百木千本先生はたいへんにブスで、そのブス描写もまた凄いんだけども。
普通、ブスを自称する人に出会ったら大抵は「そんなことないよー」て言うことになってて、ブスではないと認めてあげようとする態度をとることになってると思うんだけど、そーいう態度も、例えば(黒人差別の文脈において)黒人に対して「そんなことないよー、白いとこもあるじゃん」て言ってるような偽善と化してしまうほど迫力のブス描写。
単に容貌の問題ではない、ブスとは何者か、っていうことを微に入り細を穿ち執拗に描写されるさまを経ると、逆にブスを神々しく褒め称えたくなってくる。
もちろん巣鴨こばと会はブスを許さないので、その攻防がまた凄まじく、さらに攻防の過程においてさらにブスが忌み嫌われる構造がめきめきばりばり鮮明になってく。
ていうことなのかな。

で、そうやってブスな八百木千本先生の奮闘ぶりを応援しつつ巣鴨こばと会の女性たちをせせら笑いながら読んでると、最後にべしっとひっぱたかれる。
ほの悲しいと言えなくもないけど、女って悲しいわね的演歌な風情には絶対拠らず、ひたすら馬鹿馬鹿しくくだらなく苛立たしく悲しい。

それはつまり。

最悪のこばと会よりも凶悪なもの、それはごく普通の善良な男性。(p.250)

このことなのだよな。








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