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アントニオ・ロペス展 [展覧会、イベントなど]

アントニオ・ロペス展公式webサイト

張り切っていきなり初日っから観に行っちゃったぜ。
だって最近の展覧会ってすんごい混むんだもん。NHKの日曜美術館とかで紹介されるとすぐ行列できんだもん。(とはいえ、わたしも日曜美術館の展覧会情報チェックしちゃうんだけどな。)


「マルメロの陽光」ていう映画があって、その映画で知った画家。
アントニオ・ロペスはマドリード・リアリズムといわれる写実の作風の一派の主要な作家と目されていて、そのマドリード・リアリズムつながりで磯江毅にも興味を持ったりした。

このマドリード・リアリズムの背景というのもおもしろくって。
どうやらフランコ政権によって文化的に情報が閉ざされた時代があったそうで、結果、キュビスムとかシュールリアリズムとか抽象やパフォーマンスアート、ポップアートなんかの影響を受けなかった、ってことが要因のひとつとしてあるらしいのですね。
確かに、ひと頃は“もう具象とか古い”“抽象にあらずんば芸術にあらず”くらいの勢いで抽象表現が席巻してたようなこともあったかもなー。
で、そういう勢いから外れた場所で静かに古典的な写実が引き継がれていた、ということらしいです。

なので、マドリード・リアリズムと称されつつも、“主義”“イズム”みたいな主張する感じはあんまりしない気がする。
(いっときは、先進の表現から取り残されたガラパゴス的な芸術家たち、みたいな呼ばれ方でもあったらしいし)
でもだからって古典古典してるわけではない。


アントニオ・ロペスの作品は、ものすごーく何年も時間をかけて対象を視て描かれているだけに、時間に漂白されたような感じがする。
うつりかわる時代・社会によって見方が変わる景色や風景の、そのうつりかわるものを越えた普遍的な景色になっている、というか。
変わらないものだけを抽出しているというよりは、うつりかわっていったものをも抱えた変わらないもの、として描かれてるように見える。
今視ている景色の中には、かつて消えていった景色があって、今視ている花の中には散ったり実ったり枯れたりした花がある。

死を内包する生の姿。みたいな。
怖い、というか、畏れのようなものを感じないこともない。
鉛筆のみで描かれた、ドアを開けて覗く構図の部屋の絵なんか、ちょっとドキッとした。でもちょっとだけ。
そういう仰々しい印象じゃなくって、印象としてはなんかこう、「無」なのね。
で、「無」の中にすべてがある感じ。


描写は不思議に軽やかな印象を受けた。
軽やかっていうとなんか違うかな。重くない。クリアで鮮やか。
初期作品なんかはこってり絵の具を盛り上げてごちごちざらざらの重厚なマチエールをつくってたりするんだけど、手間暇や観察に込められた情念みたいなものを感じないつーかな。

画家は透明になってる。対象へと向かう視線だけになって、自分は居なくなってる。みたいなふうに見える。


印刷やweb画像で観たときと印象がずいぶん違った。
分厚い絵の具の層はかけられた手数や時間を感じさせ、ごっちり重量のあるマテリアルな物量感。それがクリアな光線や鮮やかな描写を邪魔しない不思議なバランス感。へーえ。

描写は詳細なようで、そうでもない部分もあり、わりと大胆にざっざか描いてる中で、押さえるべき線、加えるべきタッチがぴたっと入る。的確さが気持ちいいくらい。
きちきち定規で測ったりしてるとことか、作品によっては職人的・技巧的で、制作途中のでっかい風景の絵なんかは銭湯の富士山ペンキ絵みたいな印象が感じられないこともない。


その感じは芸術性を損なうとかそういう意味ではなくって、そもそも芸術=自己表現ていう概念自体がごく近代からの考えであって、で、そういうアプローチ以外のとこから来てるってことで。
表された色や形や質感が、表された色や形や質感以外/以上のものではなく、風景なり人物なり静物がただそこにある。
そしてただそれがそのまま描かれているということに、いろいろな感慨(人によって違うだろうし、観る気分や環境によっても違ってくる)が感じられたりする。

磯江毅の絵では、(ものや人が)存在するということが大変な奇跡なように思える、という感慨があったけれど、アントニオ・ロペスの絵には、常に新鮮な驚きがある感じ。
長い時間みつめ続けているのに、初めて視るみたいに印象が鮮やか。目が馴れない。
すごく驚いて、おもしろがって楽しみながら描いてる感じ。


すごくよかった。もっかいくらい行こうかな。
「マルメロの陽光」ももっかい観たいんだけど、どっかで上映しないかなー。






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